堀添里緒【左写真】/「狛江市平和都市宣言」われわれ狛江市民は、「日本国憲法」の前文と世界の恒久平和を達成するという精神および第9条に記された「戦争の放棄、交戦権の否認」を狛江市および狛江市民の行動原理として高く掲げたいと思う。
渡辺こちえ/狛江市および狛江市民の行動原理(「日本国憲法の前文」を指しながら)!あ、ちょっと待って。日本国憲法の前文って、何が書いてあるんだっけ?
堀添/憲法の「平和主義」と「国民主権」「基本的人権」という基本原理が書いてあるんだよ。私の一番好きなところはここなんだ。読んでみて。
渡辺こちえ【右写真】/「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意した」
堀添/うん、つまり、武器を持って戦うのではなく、お互いに信じ合うことで平和を築いていこうよということだね。
渡辺/うん。でも、相手を信じるだけじゃ危ないんじゃないか、自分たちで護る準備もしないとって言う人もいるよね。
堀添/だけど、歴史を見てみるとどこの国も「自分たちの安全を守るために」って言って戦争を始めているんだよね。そうやって武力で解決しようとするとまた新たな憎しみを生んで、それこそテロとかが起こる原因になるんじゃないかな。今は世界のあちこちでテロが起こって憎しみの連鎖になっている気がする。
渡辺/そうだよね。海外でボランティアをしてる人たちが、「誰も殺したことがない平和憲法を持つ国日本、その国民だから敵じゃないって」思われて、「憲法に護られていると感じた」って言ってたよ。
堀添/それがね、こないだイラクなどでずっと活動してる高遠菜穂子さんのお話を聞いたんだけど、最近アラブの国に行くと日本のことを「平和主義と言いながら戦争に参加している国」と言ってるって。
渡辺/そうか、一昨年、日本が攻撃されなくても同盟国つまりアメリカが攻撃されたら反撃できるという「集団的自衛権」、それを認める法案が国会を通過したもんね。
堀添/うん、どんな場合にその自衛権を行使できるのか、内容がはっきりわからない、もっと審議してほしいという世論が8割近かったのに通っちゃったんだよね。
渡辺/その議決にしても、議員がもみ合って怒号とどさくさの中で議事録にも記録できないような状況で行われたよね。
渡辺/「共謀罪」!罪を犯さなくても相談しただけで逮捕できるという今までと全く違う法律でしょ?国民の多くが審議が足りないと言ってるよね。政府はテロを取り締まるためって言ってるけど、「テロ集団」と一般の人をどうやって見分けるんだろう。
堀添/監視していなければ見分けられないよね。結局、一般人のことも監視する必要が出てくる。専門家も、テロ対策というには範囲が広すぎるし、監視社会になって言論の自由が危なくなるなど、問題が多すぎると言っているよ!
堀添/(紙を出して)ねえ、これ聞いて!何の見出しだと思う?「無理矢理に質問全部終了」「反対の叫びむなしく
○○法、今日生まれる」「社会運動が同法案のために抑圧されることはないー警視庁」
渡辺/えー、共謀罪の記事?
堀添/1925年に治安維持法が成立した時の朝日新聞の見出し。
渡辺/同じだ・・・
堀添/そう。共謀罪は戦前の「治安維持法」にすごく似てて恐ろしいって戦争体験者のおばあちゃまがおっしゃってた。その時は治安維持法ができて5年後に戦争が始まったんだって。
渡辺/えーそうなの?!
堀添/政府が、反対する人たちを取り締まれるような解釈をできないように、自分のこととしてしっかり見ていこう。
渡辺/あ、ごめん、すっかり横に逸れちゃった。
堀添/いや、大丈夫。 じゃ、なんでその三つ(Bが「これ?」という感じでボードを指す)を行動原理に掲げるのか、続きを読むね。
われわれのこの行動原理は、ヒロシマ、ナガサキ、第五福竜丸と三度にわたる原爆被爆の痛切なる体験にもとづき、かかる悲劇が二度とふたたび人類社会において繰りかえされてはならないとの確信にもとづくものである。
堀添/去年(2016年)8月現在の原爆死没者名簿には広島・長崎合わせて47万5,000人以上の方々の名前が載っているんだ。
渡辺/47万5,000人以上・・
堀添/じゃあ、狛江市平和都市宣言の続きを読むよ。
われわれは、今日の国際社会がわれわれの念願にもかかわらず、絶えざる核軍拡競争と、軍事的緊張の連続であるという事実を深く憂慮し、核軍縮こそ、人類の生存にとって最も優先させるべき課題であるとの認識の上にたって、すべての核保有国にたいし、「核兵器の研究、実験、開発、配備を停止」すること、および、「率先して核兵器の削減」を行うこと、および、「非核保有国をも含めた核軍縮交渉を開始」することを希望する。
渡辺/核兵器は減ってきてるって聞いたけど・・
堀添/それでも、今、世界には広島型原爆の約20倍の威力のある核弾頭が約1万5,000千発もあるんだって。
冨田 翔/愚かなことだね。(と言いながら、冨田 翔さん登場)
堀添・
渡辺/あ、物知りにいさん!
冨田/だけど今、国連で「核兵器廃絶」のために新しい動きがあるんだよ。知ってる?
堀添/「核兵器禁止条約を作る国連会議」ですよね!
冨田/おーよく知ってるね。そう!(2017年)3月から国連総会で、核兵器を全面的に禁止する条約を作ろうと交渉会議が始まって、(2017年)7月7日に「核兵器禁止条約」が採択されたんだ。
渡辺/え?いままでもそういう協定や条約はあったんじゃないんですか?
冨田/「核不拡散条約」いわゆるNPTだね、とかアメリカと当時のソ連の間の「戦略的核兵器禁止条約」とかはあったけど全面的に禁止しようというのはなかったんだよ。
堀添/聞いたことあるわ。核不拡散条約っていうことは新しく持ってはいけないってことで、今持っている国はいいわけでしょ。なんか変じゃないかなあと思った。
渡辺/今回の交渉会議にはどのくらいの国が参加したんですか。
冨田/国連加盟国193か国の内、124か国が参加して122か国が賛成。反対(オランダ)と棄権(シンガポール)がそれぞれ1か国だった。
渡辺/日本は賛成したんですか?
冨田/日本はこの会議自体に参加していないんだよ。
渡辺/え?どういうことですか?
冨田/去年(2016年)の12月にこの条約を作る交渉会議を開くかどうかを決議したんだけど、日本は反対したんだ。
渡辺/どんな国が反対したんですか。
冨田/核兵器所有国の中で中国・インド・パキスタンは棄権したが、あとはみんな反対。アメリカの軍事同盟国も反対したんだ。
渡辺/唯一の戦争被爆国の日本が反対したんだ・・・
堀添/アメリカの核の傘の中に入っているからですね。各国から唯一の被爆国が参加しないことへの失望の声がいっぱい聞かれましたね。
渡辺/ん~、核保有国が反対だと意味がないんじゃないですか。
冨田/核保有国は法的拘束力は受けないけれど、多くの国が賛成して法律ができれば、それは道義的・政治的圧力を受けることになるし、その国で反対運動を続けている市民にも力を与えるよ。そしてもちろん参加するように粘り強く交渉を続けることが大切だね。
渡辺/この条約はいつ発効するんですか。
冨田/9月20日から各国の批准手続きが始まって、それが50か国に達したらその90日後に発効するんだよ。
堀添/その後は、どうなるんですか。
冨田/2年に1回、会議が開かれ、発効後5年目には再検討会議が開かれる。どの会議にも、条約に加わらない国もNGOもオブザーバーとして参加を認めているんだ。
堀添/で、その「核兵器禁止条約」の内容ですが・・
冨田/前文に「核兵器使用の犠牲者(ヒバクシャ)と核兵器実験の被害者にもたらされた苦痛と被害を心に留める」という表現が盛り込まれているんだ。
堀添/今日、第二部で長崎で被爆された木村徳子さんがお話をして下さるんですよね。
渡辺/しっかり聞きたいです。
冨田/原案をまとめた条約交渉会議の議長国コスタリカのホワイト大使の話だと田上長崎市長から被爆者の思いを交渉会議に伝えてほしいと依頼されたということなんだよ。広島の松井市長も国連で思いを伝えている。
渡辺/被爆者の思いですか。
冨田/「被爆者がみんなこの世を去る前に、核兵器禁止条約の実現を見届けたい」ということだ。
堀添/核兵器は安全保障のための「必要悪」などではなくて人道的に「絶対悪」だとずーっと訴えてきた被爆者の願いが盛り込まれたんですね。
渡辺/非人道的だから使ってはいけないと禁止条約ができている兵器とがあるよね。
堀添/生物・化学兵器や対人地雷、クラスター爆弾・・
渡辺/そこにやっと、一番入れるべきだった「核兵器」が入るんですね。
冨田/そうなんだ!!。そして、条約では「放射線の女性への悪影響」や「被害者支援と環境回復」など被害者の視点が多く盛られているよ。
冨田/それからもう一つ、今年は新しい動きがあるけど知ってる?
堀添・
渡辺/(顔を見合わせて)ん?・・・・。
冨田/被爆者の方たちが初めて自分たち自身で街頭に出て・・
堀添/あ、「ヒバクシャ国際署名」でしょ!さっきプログラムの中に挟まっているのを見ましたよ。
冨田/そう。「後世の人々が生き地獄を体験しないように、生きている間に何としても核兵器のない世界を実現したい」という思いだと書いてある。「目的」の中のこの部分を読んでごらん。(紙を渡す)
渡辺/「政策を変えさせるのは、国民の声・要求です。国内外の世界のすべての人が核兵器廃絶を求めることで、核兵器の廃絶を実現することを目的とします。
堀添/よし!周りの人たちにも署名をすすめようね。
渡辺/にいさんが出てきたからついでに聞きたいことがあるんですけど。
冨田/何かい?
渡辺/そもそも、狛江市平和都市宣言っていつ、なんで作られたの?
冨田/作られたのは35年前、つまり1982年6月なんだ。そのころは、アメリカとソ連、その二つの国を中心に核兵器を作る競争が激しいときだったんですよ。ピーク時には世界に7万発以上もあったんだ。
堀添・
渡辺/そうか・・
冨田/そして世界中の人たちのこれではいけないという思いが強くなっていた。ちょうど第2回国連軍縮特別総会が開かれることになった。
堀添・
渡辺/国連軍縮特別総会ですか?!
冨田/そう。日本では市民の間で、唯一の被爆国として、核兵器を完全になくすことを求めるアピールを国連に提出しようという動きが出てきたんだ。各自治体では市民がそのアピールに賛同する署名運動をやり始めた。
渡辺/署名はどのくらい集まったんですか?
冨田/8,000万人!
堀添・
渡辺/え~! 8,000万人?!
堀添/当時の人口って・・
冨田/1億2,000万人くらいだね。
堀添・
渡辺/うわあ・・
堀添/自治体が国と手を取り合って行動したわけですか?
冨田/違うんだ。唯一の被爆国日本でさえ、国としてはアメリカの核の傘に入っているので核兵器廃絶に消極的だったんだ。
渡辺/え?今回の「核兵器禁止条約」でもまた同じスタンスの繰り返しなんだ。
冨田/そうなんだ。でも、当時は、色々な政党や様々な宗教団体、労働組合、市民団体などみんなが核兵器の廃絶ということで一つになった。
渡辺/それでそのアピールはどうなったんですか?
冨田/このアピールは国連で採択はされなかったけど、世界が核廃絶に向けて進む歩みへの大きな力になったはずだよ。さらに、広島と長崎の両市長が、0恒久平和のために、世界の都市が力を合わせようじゃないかと呼びかけて、「世界平和連帯都市市長会議」が設立されたんだ。今の「平和市長会議」だね。現在世界の一六二の国と七三九二都市が加盟、毎年増えているよ。日本では一六七九都市が加盟している。
渡辺/狛江市も入ってますよね?
冨田/もちろん!
渡辺/そうか。そしてそのアピールを背景に、市民から、自治体としても「平和都市宣言」をして欲しいという請求がでてきたんですね。
堀添/市民が力を合わせた結果、「狛江市平和都市宣言」は市議会で、全会一致で採択されて、これが狛江市の宣言として扱われることになったんだ!
渡辺/全会一致!ってとこがすごいね。
冨田/この平和フェスタはこの宣言を実践していこうということで始められたんだよ。
堀添/じゃ、続きを読みます!われわれの海や大地は、戦争のために汚されることがあってはならず
冨田/そうだ!
渡辺/原発事故や核のゴミによっても汚されてはならないよ!
冨田/そう!そのとおり!
堀添/人類の生存のために利用されるべきものであると確信するがゆえに、非核三原則を守り、
渡辺/非核三原則。核兵器を、持たず・作らず・持ち込ませず。(白板に文字を貼り付ける)
渡辺/ねえ、ここからみんなで読もうよ。
堀添・
冨田/いいね!
堀添/お手元のプログラムに挟んである水色?の紙に「狛江市平和都市宣言」が書かれています。最後の段落をみんなで読みませんか。「われわれの海や・・」からです。
堀添・
渡辺・
冨田/せ~の!
会場全員で/われわれの海や大地は、戦争のために汚されることがあってはならず、人類の生存のために利用されるべきものである、と確信するがゆえに、非核三原則を守り、狛江市および狛江市民は、各平和宣言都市と手を結び、核兵器完全禁止・軍縮、全世界の非核武装化にむけて努力することを宣言する。
昭和57年6月21日 東京都狛江市議会
おわり
5月27日(土)、中央公民館和室で、ことしの朗読劇練習が始まりました。残念ながら冨田翔さんは都合がつきませんでしたが、脚本・演出の二階堂まりさん(俳優、実行委員)と、昨年出演した堀添里緒さん、そしてことし初めて出演する渡辺こちえさんが集まりました。