狛江市平和都市宣言朗読劇
司会・川上美砂/次は、毎年恒例となっている狛江市平和都市宣言の朗読劇です。この平和フェスタの原点になっているものです。ご一緒にこの平和都市宣言の成り立ちや素晴らしさに思いを馳せてみたいと思います。
堀添里緒/(狛江平和都市宣言の冒頭部分を読んでいる。)
「狛江市平和都市宣言」
われわれ狛江市民は、「日本国憲法」 の前文と世界の恒久平和を達成するという精神および第九条に記された 「戦争の放棄、交戦権の否認」 を狛江市および狛江市民の行動原理として高く掲げたいと思う。
冨田 翔/狛江市および狛江市民の行動原理! あ、ちょっと待って。日本国憲法の前文って、何が書いてあるんだっけ?
堀添/

憲法の 「平和主義」 と 「国民主権」「基本的人権」 という基本原理が書いてあるんだよ。
ちょっと読むね。 「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。」
冨田/あれ?国連憲章に似てない?
堀添/そう。1945年10月にできた国連憲章の一番はじめには 「我ら連合国の人民は、我らの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害・・悲惨な災害ね・・戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と、男女および大小各国の同権とに関する信念を改めて確認し・・」と書いてある。
冨田/どっちも、戦争への深い反省と人間の尊厳や人権を価値観の基本にしようって言ってるね。
堀添/国連憲章と憲法九条のすっごく似ているところをほかにも見つけたよ!
冨田/どこ?
堀添/第1章第2条4項 「国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも・・・」 やってはいけないと言っているんだよ。
冨田/えー!憲法九条の「国権の発動たる戦争と、(堀添/も唱和) 武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」 ホントそっくりだ!
堀添/つまり、狛江市平和都市宣言は、日本の平和憲法、国連憲章と切っても切れないものなんだ!
冨田/そうか!
堀添/憲法前文にもどるね。

私の一番好きなところはここよ。(と、紙を渡す)
冨田/あ、これ中学のとき覚えたよ! 「・・・平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我らの安全と生存を保持しようと決意した。」
堀添/すご~い!うん、つまり、武器を持って戦うのではなく、お互いに信じ合うことで平和を築いていこうよということだね。
冨田/うん。でも、相手を信じるだけじゃ危ないんじゃないか、自分たちで護る準備もしないとって言う人もいるよね。
堀添/だけど、歴史を見てみるとどこの国も 「自分たちの安全を守るために」 って言って戦争を始めているんだよね。そうやって武力で解決しようとするとまた新たな憎しみを生んで、それこそテロとかが起こる原因になるんじゃないかな。今は世界のあちこちでテロが起こって憎しみの連鎖になっている気がする。
冨田/そうだよね。海外でボランティアをしてる人たちが、誰も殺したことがない平和憲法を持つ国日本、その国民だから敵じゃないって思われて、「憲法に護られていると感じた」って言ってたよ。あ、だけど、ずっと論争になっていた 「集団的自衛権」 が去年国会を通過したよね。
堀添/

そう、これまでは、政府は、憲法が許すのは 「個別的自衛権」 だけで、それも 「専守防衛」 つまり攻められたときだけ許されるとしていた。
冨田/でも 「集団的自衛権」 が持てることになった。
堀添/ほかの国の戦争にも協力できることになったし、日本が攻められなくても海外で戦闘に加わることがもできるようになったんだ。
冨田/集団的自衛権を持つと・・・
堀添/政府はそうすることで抑止力が働くから、他国から攻められないと言っている。
冨田/え?そうなのかなあ・・。いままでにアメリカの戦争や攻撃に軍事協力をしてきたイギリスやフランス、イタリアなどでテロが起こって多くの人が犠牲になっているのはどうなのかなあ。
堀添/そうだよね。
冨田/それに歴代の政府が「違憲」としてきた「集団的自衛権」を一代の政府が勝手に変えるってどうなのかな。憲法学者はどう思っているんだろう。
堀添/大多数の憲法学者が「違憲」だとして声を挙げたし、弁護士連合会や元最高裁判所の判事なども違憲としていた。成立直後の世論調査では、法律に反対が過半数で、国会での審議が尽くされたと思わないが色んな調査の平均で77%以上だった。
冨田/

安保法制っていうけど、法律がいくつかセットになっているの?
堀添/21本の関連法を全部まとめて一括で審議したんだよ。
冨田/21本をまとめて一括で?!・・・結局「憲法」に抵触しないのかっていうことも、何故いま必要なのかということもわからなかったなあ。
堀添/うん、よくわからないからもっと説明してほしいという世論が多数だった。その中で,(2015年) 9月19日未明に採決されたね。
冨田/議決にしても、議員がもみ合って怒号とどさくさの中で議事録にも記録できないような状況で行われたよね。
堀添/少数意見も大切にする民主主義、政府の独走を憲法によって縛るという立憲主義・・それはとても大切だよね。
冨田/あ、ごめん、すっかり横に逸(そ)れちゃった。
堀添/いや、狛江の平和都市宣言は基本になっているのが平和憲法なんだから、逸れてないよ。大丈夫。
冨田/次、どうぞ!
堀添/じゃ、なんでその三つを行動原理に掲げるのか、続きを読むね。
われわれのこの行動原理は、ヒロシマ、ナガサキ、第五福竜丸と三度にわたる原爆被爆の痛切なる体験にもとづき、かかる悲劇が二度とふたたび人類社会において繰りかえされてはならないとの確信にもとづくものである。
冨田/被曝はその時だけのことじゃなくて、放射能の影響はその後も続くんだよね。
堀添/去年の8月現在の原爆死没者名簿には広島・長崎合わせて46万6,000人以上の方々の名前が載っているんだ。さっき読んだところにあった「第五福竜丸」は知ってる?
冨田/第五福竜丸って、アメリカが太平洋で水爆実験をやったときに放射能の死の灰を浴びて、23名の乗組員が被爆した船の名前だよね。え~っと、1950 ・・・
堀添/1954年3月1日午前3時45分。第五福竜丸が有名だけど、本当はほかにも約1,000隻の船が死の灰を浴びているんだって。
冨田/え?1,000隻??!
堀添/うん。知ってる?その2日後の3月3日に国会では、日本初の原子力予算が突然提出され、4月3日に成立したんだよ!
冨田/え~?!そんな時期に?
堀添/「核の平和利用」というので国民は素晴らしい未来をそうぞうしてしまったんだ。
冨田/「平和」 といわれると、いいことかなと思っちゃうよね。
堀添/核の 「平和利用」 って言っても、確か、原発で発電すると、そのゴミとして、核兵器に使うプルトニウムが作られるんだよね。
冨田/うん。それに、原発も原爆と同じように放射能で被曝させるということに気がつかなかったのかなあ・・
堀添/原料のウランを掘る人はもちろん被ばくするし、原発で働く労働者や原発から出る核のゴミを処理する人、福島で収束作業をしている方たちの被曝量が気になるなあ。
冨田/福島の人と話をすると、多くの人が健康に不安をかかえている・・
堀添/核のゴミは何万年も地下深くに埋めて管理しなければならないけどそんな場所だって見つかってないし・・
堀添/じゃ、次行くよ。 われわれは、
冨田/ちょっと待って。
堀添/え~っ、また?
冨田/いま急に思ったんだけど、そもそも狛江市平和都市宣言っていつ、なんで作られたの?
堀添/作られたのは1982年6月だから今年で34年になるんだよ。だけど何でってのはよくわかんないなあ。

(二階堂まり、マイクを持って、しゃべりながら登場)
二階堂まり/1982年ごろというのは、アメリカとソ連、今は連邦はなくなってロシアやウクライナなどの国に分かれてるね、その二つの国を中心に核兵器を作る競争が激しいときだったんですよ。
堀添&冨田/あ! まりちゃん!
二階堂/そして世界中の人たちのこれではいけないという思いが強くなっていた。ちょうど第2回国連軍縮特別総会が開かれることになった。
堀添&冨田/国連軍縮特別総会ですか?!
二階堂/そう。日本では市民の間で、唯一の被爆国として、核兵器を完全になくすことを求めるアピールを国連に提出しようという動きが出てきたんだ。各自治体では市民がそのアピールに賛同する署名運動をやり始めた。
冨田/署名はどのくらい集まったんですか?
二階堂/8,000万人!
堀添・冨田/え~! 8,000万人?!
堀添/当時の人口って・・
二階堂/1億2,000万人くらいだね。
堀添&冨田/うわあ・・
堀添/そんなに集まったということは、自治体が国と手を取り合って行動したわけですね?
二階堂/違うんだ。唯一の被爆国日本でさえ、国としてはアメリカの核の傘に入っているので核兵器廃絶に消極的だったんだ。でも、色々な政党や様々な宗教団体、労働組合、市民団体などみんなが核兵器の廃絶ということで一つになった。電車の中で署名活動をやっていたのを覚えているっていう人もいるんだよ。
堀添&冨田/へえ~、すごいね。
冨田/国の方針がおかしかったら自治体と市民は独自に行動をとってもいいということですか?
二階堂/そのとおり! 今では「地方自治法」で自治体は国と対等な存在として認められているんですよ。それから、憲法の 「第八章 地方自治」 のところなんてみんな読んだことないと思うけどすごく大切ないいことが書いてありますよ。
堀添/95条 「一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。」
冨田/地方を専制政治から守る役割をしているんだ。
堀添/沖縄も地方公共団体だよね・・・
二階堂/そうだよ!
冨田/それで、そのアピールはどうなったんですか?
二階堂/このアピールは国連で採択はされなかったけど、広島と長崎の両市長が、恒久平和のために、世界の都市が力を合わせようじゃないかと呼びかけて、「世界平和連帯都市市長会議」 が設立されたんだ。今の 「平和市長会議」 ね。現在、世界の 161 の国と 7,095 の都市が加盟しているよ。
冨田/狛江市も入ってますよね?
二階堂/もちろん!
堀添/そうか。そしてそのアピールを背景に自治体として 「平和都市宣言」 をして欲しいという請求がでてきたんですね。
冨田/狛江ではどんな人たちが中心になったんですか?
二階堂/もうその数年前に、「こまえ平和の会」 というのができていたんだよ。これは狛江に住む学者や文化人など著名人に呼びかけて作られた市民の会で、党派や細かい考え方の違いは超えて一緒に平和を考えようという縛りのゆる~い、間口の広~い会なんだ。
冨田/で、具体的にはどんなことをやったんですか?
二階堂/「平和キャラバン隊」 というグループを作って2台の車で2日間市内を回ったんだ。いろいろなところで車を止めて署名を集めたり、署名用紙を渡して、いつどこどこに行くから持ってきてねと頼んだりしたんだ。車の上では若者が生演奏をしてた。
堀添/今も昔も若者は歌や音楽で思いを表現してきてるんですね。
(ステージ後方から 「平和の鐘」 の歌が聞こえてくる)
堀添/これ 「平和の鐘」 だね。
(3人一緒に口ずさむ)
「僕らが生まれたこの星に 奇跡を起こしてみないか
こぶしを広げて 繋ぎゆく 心は一つになれるさ
平和の鐘は 君の胸に 響くよ」
二階堂/そして、市役所広場でもイベントをやりました。これが市役所広場を市民のイベントに開放した始まりです。
堀添/市民が力を合わせた結果、「狛江市平和都市宣言」は市議会で、全会一致で採択されて、これが狛江市の宣言として扱われることになったんだ!
冨田/全会一致!ってとこがすごいね。だから、それまで市民レベルでやっていた憲法の行事や夏の平和行事なども、市が独自でやったり一緒にやったりするようになったんだね。
二階堂/この平和フェスタも、一昨年までの10年間は、市民と市が一緒に創る 「共催」 のイベントで、毎年市長も議長も参加していたんだ。つまりは、この平和都市宣言が後押ししていたわけだね。
冨田/え?去年からは違うんですか?!
二階堂/残念ながら去年からは 「共催」 という形にはならなかったけど、狛江市も市の教育委員会も後援していますよ。
堀添/じゃあ、狛江市平和都市宣言の続きを読むよ。
われわれは、今日の国際社会がわれわれの念願にもかかわらず、絶えざる核軍拡競争と、軍事的緊張の連続であるという事実を深く憂慮し、核軍縮こそ、人類の生存にとって最も優先させるべき課題であるとの認識の上にたって、すべての核保有国にたいし、「核兵器の研究、実験、開発、配備を停止」すること、および、「率先して核兵器の削減」を行うこと、および、「非核保有国をも含めた核軍縮交渉を開始」することを希望する。
冨田/ねえ、知ってる?核兵器は減ってきたといっても、今でも世界には広島型原爆の約20倍の威力のある核弾頭が1万6,300発もあるんだって?
二階堂/愚かなことだね。
冨田/核兵器だけじゃなくて、戦争は基本的人権を踏みにじる。たくさんの悲惨な戦争体験から学んで作られた「平和主義」「国民主権」「基本的人権」を大切にしたい!
堀添/じゃ、続きを読みます!
われわれの海や大地は、戦争のために汚されることがあってはならず、
二階堂/そうだ!
冨田/原発事故や核のゴミによっても汚されてはならないよ!
二階堂/そう!そのとおり!
堀添/
人類の生存のために利用されるべきものであると確信するがゆえに、非核三原則を守り、
冨田/非核三原則。 核兵器を、持たず・作らず・持ち込ませず。
冨田/ねえ、ここからみんなで読もうよ。
堀添&二階堂/いいね!
堀添/お手元のプログラムに挟んである水色の紙に 「狛江市平和都市宣言」 が書かれています。最後の段落をみんなで読みませんか。「われわれの海や・・」からです。
会場全員/
われわれの海や大地は、戦争のために汚されることがあってはならず、人類の生存のために利用されるべきものであると確信するがゆえに、非核三原則を守り、狛江市および狛江市民は、各平和宣言都市と手を結び、核兵器完全禁止・軍縮、全世界の非核武装化にむけて努力することを宣言する。
昭和57年6月21日
東京都狛江市議会
司会/堀添里緒さん、冨田翔さん、二階堂まりさんのみなさんでした。
もう一度大きな拍手を送りましょう。
おわり
2016.07.31
狛江市平和都市宣言朗読劇練習風景
狛江市平和都市宣言朗読劇の練習が7月31日から始まりました。この平和都市宣言の普及と実践が平和フェスタ のそもそもの原点です。ここ数年は朗読劇にして、毎年の平和に関する状況変化を採り入れた脚本を作成しています。脚本・演出は俳優の二階堂まりさん (実行委員) が担当、ことしは連続出演している冨田翔さんと、一年ぶり復帰の堀添里緒さんの出演が決まっています。どんなお話が聞けるのかお楽しみに。
出演:
冨田 翔さん
出演:
堀添里緒さん
脚本・演出・出演:
二階堂まり さん
脚本の疑問や感想、修正などを議論しながら、その当時の状況や人の想いを受け止めて、朗読の意識を高めていきます。
脚本の読み合わせは、真剣そのもの。いろんな読み方を試しながらの練習です。